デレステSS「小梅の映画鑑賞会 速水奏GUEST編」
小梅の映画鑑賞会 速水奏GUEST編
小梅の自室。
「……楽しかった」
「ふふふ、よかった。『永遠のこどもたち』、小梅ちゃんはもう観てるかなって心配だったんだけど」
「ん、ホラーの棚で見かけたこと、なかったから」
「うーん、たしかにレンタルショップだとなぜかSFとかドラマの棚に置かれているものね」
「でも……ちょっと、わかる。こわいけど……かなしくて、しあわせ?」
「そうね、みんな向こうに行っちゃったけど、そっちの世界も妖しくて、どこか美しくて。そういう永遠も幸せなのかもって私も感じた」
「うん、ひとりよりみんなといっしょに。わたしもシモンとおんなじきもち」
「ふふふ、気に入ってくれてよかった」
「んと……ありがとう」
「どういたしまして」
「あっ……」
「どうしたの?」
「さっちゃんが……」
「輿水、さん?」
輿水幸子、カエルのクッションを絞るようにきつく抱きながら固まっている。
「さっちゃん……」
と小梅、幸子の首筋に裾をそっと撫でる。
「んひいいいいいいいい、ボクは!怖くないですよ、ボクは!」
数分後。
ずびずびとアップルティーを飲む幸子。
「さっちゃん……こわいの苦手?なのに見にきてくれた。やさしい」
小梅、ベッドに腰掛け、カーペットに体操座りしている幸子の鎖骨に緩く手を置いている。
クスクスと奏は微笑む。
「は、速水さん、笑わないでください!」
「ううん、そうじゃないの。二人がとっても仲よしみたいだから」
「うん……さっちゃんは、大切なお友達」
「小梅さん」
「この子と、おなじくらい……」
「ブフーーーー!(紅茶を吹く)」
またおかしそうに笑う奏。
「輿水さんはカワイイわね」
「め、面と向かって言わないでください!いや、ボクは確かにカワイイんですけどね!」
「うん、カワイイわよ。ホントにね」
「う、うーーー!」
カエルクッションで頭を塞ぐ幸子。
「なんだかふしぎ、こうやって小梅ちゃんや輿水さんと一緒に映画を見て、楽しくお話しするなんて、一年前は想像もしてなかったわ。映画をみんなで見ることなんて今までなかったから」
「は、奏さんはお友達と映画を見たりはしなかったのですね」
「うん、男の子は遠慮ぎみだったし、友達の女の子ともそういう機会がなかったから」
困ったような笑いを浮かべる奏。
「ボ、ボクもそうとーなもんですけど!でもか、か、奏さんはちょっと背が高くてセクシーだからですね!えと、いいと思いまふ」
「さっちゃんが噛んだ……」
「ねえ、小梅ちゃん」
「なに……?」
「幸子ちゃん、もらってもいい?私、妹にしたいわ」
「ダメ。さっちゃんはしょーこちゃんと私のもの」
「白坂さん、勝手にボクを所有しないでください!ボクはボクを愛する多くのファンのものですから!」
「ちぇっ……」
と、奏のスマホが振動し、奏が電話を取る。
「うん、……うん、もうすぐ帰るから。心配しないで。じゃあね、パパ」
電話を切る奏。
「ごめん、もう帰らなきゃ。小梅ちゃん、幸子ちゃん、今日はありがと。とっても楽しかったわ」
「わたしも、楽しかった……バイバイ」
「帰りは気をつけてくださいね!プロデューサーさんみたいな変な人がいるかもしれませんからね!」
奏、笑って部屋を出る。
「お父さんのこと、パパって呼んでいましたね、奏さん。流石という所ですかね、白坂さん。って、白坂さん?」
小梅、部屋からいなくなっている。
寮の玄関。
白い息を吐きながら歩く奏の後ろからパタパタと足音が聞こえる。
「あら、どうしたの小梅ちゃん」
「んと……これ」
フランスのホラー映画のDVDを取り出す。
「わたしも……奏さんとホラー映画見るの、すごく好きだから。今度はわたしの……おすすめをいっしょに、みよ?」
はっとして、奏、小梅をゆっくりとハグする。
「映画の幻想的な美しさに憧れることもあるけど、ふふ、現実も悪くないなって思うわ。ありがと、小梅ちゃん」
「えへへ……」
「それじゃ、また遊びに来るわね」
「……またね」
「うん、また」
奏は小梅と別れ、自宅へと向かう。
その足取りはいつもよりもわずかに軽い。
一方、幸子。
「白坂さん、ついに幽霊に連れ去られてしまったというのですか!?白坂さん、返事をしてください!白坂さーーーん!」
その後、幸子は寮母にこっぴどく怒られたのだった。
END