屍体少女のSS墓地/4月10日まで休止。新人賞向けの長編書いてます

SS置き場です。アイマス、デレマスメイン。

デレステSS「小梅の映画鑑賞会 速水奏GUEST編」

小梅の映画鑑賞会 速水奏GUEST編

 

小梅の自室。

「……楽しかった」

「ふふふ、よかった。『永遠のこどもたち』、小梅ちゃんはもう観てるかなって心配だったんだけど」

「ん、ホラーの棚で見かけたこと、なかったから」

「うーん、たしかにレンタルショップだとなぜかSFとかドラマの棚に置かれているものね」

「でも……ちょっと、わかる。こわいけど……かなしくて、しあわせ?」

「そうね、みんな向こうに行っちゃったけど、そっちの世界も妖しくて、どこか美しくて。そういう永遠も幸せなのかもって私も感じた」

「うん、ひとりよりみんなといっしょに。わたしもシモンとおんなじきもち」

「ふふふ、気に入ってくれてよかった」

「んと……ありがとう」

「どういたしまして」

「あっ……」

「どうしたの?」

「さっちゃんが……」

「輿水、さん?」

輿水幸子、カエルのクッションを絞るようにきつく抱きながら固まっている。

「さっちゃん……」

と小梅、幸子の首筋に裾をそっと撫でる。

「んひいいいいいいいい、ボクは!怖くないですよ、ボクは!」

 

数分後。

ずびずびとアップルティーを飲む幸子。

「さっちゃん……こわいの苦手?なのに見にきてくれた。やさしい」

小梅、ベッドに腰掛け、カーペットに体操座りしている幸子の鎖骨に緩く手を置いている。

クスクスと奏は微笑む。

「は、速水さん、笑わないでください!」

「ううん、そうじゃないの。二人がとっても仲よしみたいだから」

「うん……さっちゃんは、大切なお友達」

「小梅さん」

「この子と、おなじくらい……」

「ブフーーーー!(紅茶を吹く)」

またおかしそうに笑う奏。

「輿水さんはカワイイわね」

「め、面と向かって言わないでください!いや、ボクは確かにカワイイんですけどね!」

「うん、カワイイわよ。ホントにね」

「う、うーーー!」

カエルクッションで頭を塞ぐ幸子。

「なんだかふしぎ、こうやって小梅ちゃんや輿水さんと一緒に映画を見て、楽しくお話しするなんて、一年前は想像もしてなかったわ。映画をみんなで見ることなんて今までなかったから」

「は、奏さんはお友達と映画を見たりはしなかったのですね」

「うん、男の子は遠慮ぎみだったし、友達の女の子ともそういう機会がなかったから」

困ったような笑いを浮かべる奏。

「ボ、ボクもそうとーなもんですけど!でもか、か、奏さんはちょっと背が高くてセクシーだからですね!えと、いいと思いまふ」

「さっちゃんが噛んだ……」

「ねえ、小梅ちゃん」

「なに……?」

「幸子ちゃん、もらってもいい?私、妹にしたいわ」

「ダメ。さっちゃんはしょーこちゃんと私のもの」

「白坂さん、勝手にボクを所有しないでください!ボクはボクを愛する多くのファンのものですから!」

「ちぇっ……」

と、奏のスマホが振動し、奏が電話を取る。

「うん、……うん、もうすぐ帰るから。心配しないで。じゃあね、パパ」

電話を切る奏。

「ごめん、もう帰らなきゃ。小梅ちゃん、幸子ちゃん、今日はありがと。とっても楽しかったわ」

「わたしも、楽しかった……バイバイ」

「帰りは気をつけてくださいね!プロデューサーさんみたいな変な人がいるかもしれませんからね!」

奏、笑って部屋を出る。

「お父さんのこと、パパって呼んでいましたね、奏さん。流石という所ですかね、白坂さん。って、白坂さん?」

小梅、部屋からいなくなっている。

 

寮の玄関。

白い息を吐きながら歩く奏の後ろからパタパタと足音が聞こえる。

「あら、どうしたの小梅ちゃん」

「んと……これ」

フランスのホラー映画のDVDを取り出す。

「わたしも……奏さんとホラー映画見るの、すごく好きだから。今度はわたしの……おすすめをいっしょに、みよ?」

はっとして、奏、小梅をゆっくりとハグする。

「映画の幻想的な美しさに憧れることもあるけど、ふふ、現実も悪くないなって思うわ。ありがと、小梅ちゃん」

「えへへ……」

「それじゃ、また遊びに来るわね」

「……またね」

「うん、また」

奏は小梅と別れ、自宅へと向かう。

その足取りはいつもよりもわずかに軽い。

 

 

 

 

 

一方、幸子。

「白坂さん、ついに幽霊に連れ去られてしまったというのですか!?白坂さん、返事をしてください!白坂さーーーん!」

その後、幸子は寮母にこっぴどく怒られたのだった。

 

END